帰路の途中
憂鬱な帰り道だった
あの頃も今も、大して変わらない気がする
私には家など、どこにもない
自分を待っていてくれる、温かい家はどこ?
どこにいようが、私は居候。ひとりぼっち。
性格なのか、昔からなんとなく人付き合いは苦手だな。
だって、周りの人たちの会話の一つ一つを気に留めず
スルーすればいいのに、軽く受け流すことができなくて
地上に落ちては消えゆく、言葉のピースたちを全て拾おうとしては
その言葉たちに胸がえぐられるような、ささくれをつくる
チクチクする指先をに握りしめて、生きる理由を見出せない自分がいる
あの日の帰り道もまた、家に帰るのがブルーだった
見慣れた道の、だけどあてはない道を歩いていた時のこと
いつもなら通り過ぎる公園の三人がけのベンチが目に止まった
端に女性が一人座ってイヤホンをつけて本を開いている
(音楽でも聴きながら、読書をしているのかな)
三人座ったら、かなり密な距離になるサイズのベンチ
どうしようかな、、と戸惑いつつも、思い切って声をかけてみた
「ここに座ってもいいですか?」
女性がコクリと首を縦に頷くのを確認して
真ん中を開けて、上着を脱いで
私もベンチの端に腰をかける
女性同士だからか、ちょうどいい距離感。
窮屈な感じもない
(陽が出ているから、体がポカポカするや)
頬が、ほんの少しジリジリさえくらい
(日焼けしてシミになりそうなのが心配だけど・・・)
だけど、それでも座っていたい気持ち
少し先に、子供達のはしゃぐ声
子連れのご家族が、なわどびをみんなでしている。
あれはお子さんたちの祖母の笑い声かなぁ
小さな体で走り回り、よく動く子供達
縄跳びを回しながら、手解きをしつつ笑う大人たち
(楽しそう)
暖かな陽気とほんの少し先で聞こえる声を感じながら
目の前の建物を見上げる
ふと女優波留さんと俳優伊勢谷友介さん主演のドラマで使われていた
セリフを思い出す
お前は自分が好きか?
いかなる時も
自分にだけは愛を注がないといけない
自分を愛するといっても、
自分を甘やかすことじゃないからね。
自分を愛すれば、
時間を無駄にしないし
自分を磨くことができる。
自分を傷つけることもなければ
自分の体を大切にする。
もしお前が体だけの関係を続けていこうとするならば
それは、自分への愛が足りないからだ。
バックならいくらでも代わりはあるが
お前の体はこの世にたった一つしかない。
お前自身が愛を注いでやらないでどうする?
自分を愛せ
(そう、自分を愛せ だよね)
(自分が自分を愛さずにしてどうするの?)
自分にそう言い聞かせてはみても、
すぐに目の前に立ちはだかる「日常」に表情が曇る
だけど、自分に優しくできるのは自分だけ。
天を仰ぎ見た陽の光が眩しくて、目が開けられなくない
(は~ 空はこんなにもあかるいんだね~)
たまにはこんな、のどかな日があってもいいよね?
目を閉じて、ゆっくり、息をする。
(あ、ちょっと久々な感覚かも)
そういえば最近、呼吸もずっと浅くて
なんか、苦しかったな
くたびれて、後ろ向きになっているわたしへ
外の空気とおひさまが、癒しをくれました
さあ お家へ帰ろうか
たとえそこが安住の地でなくとも
たとえそこに居候しているだけの身だと言われても
たとえ、今こころ許せる味方や話し相手がいなくても
いつか私の暖かな居場所を見つけよう